純潔花嫁―無垢な新妻は冷徹社長に一生分の愛を刻まれる―
「そこで玉響姉さんとのことで話したんだけど、姉さんの遺体が見つかった場所の辺りで、四片の禿が簪を見つけたって本当?」
彼女はすぐに思い当たり、「あーそうそう、いつか睡に渡そうって思ってたんだ」と話し出す。
「禿が見たこともない簪を持ってたから、それはどうしたの?って聞いたら、玉響さんが亡くなった直後にあの場所で見つけたって言うのよ。だからたぶん、遺体が運ばれるときにつけていたものが落ちたんじゃないかな」
「本当に姉さんのものなの?」
「そうだと思う。禿から預かって瑛一さんに見せたら、玉響さんのものだって言ってたから」
四片と瑛一が語った内容は一致していて、先ほど聞いた話の信憑性が高まる。
ここへ来た目的は、玉響が最期につけていたその簪を見せてもらうためだ。彼女が隠していた秘密を、睡は暴こうとしている。
「それ、今持ってこれる?」
「ん、わかった。ちょっと待ってて」
四片はやや不思議そうにしつつも、了承して廓の中へ戻っていった。睡はひとり外で待ちながら、胸のざわめきをなんとか抑えようとする。