純潔花嫁―無垢な新妻は冷徹社長に一生分の愛を刻まれる―
「姉さん? どうしたの?」
「ごめん、月のもので身体がつらくて……ちょっと休む」
はっとした玉響は咄嗟にそう口にした。睡蓮は納得した様子で「あらら、そっか。お大事にね」と優しく声をかけ、静かに襖を閉めた。
こんな調子でなんとかやり過ごすことが多くなる中、玉響は薄々気づき始めていた。眩暈がただの体調不良ではないことに。
瑛一を迎えた晩も眩暈に加えて頭痛に襲われ、相手もできずに横になった。しばらくして症状は落ち着いたが、放っておいていいものではないことくらい瑛一にもわかる。
「頭は心配だ。すぐに医者に診てもらったほうがいい」
「いいの……たぶんもう手遅れよ。母さんが同じ症状で死んだからわかるの」
玉響が力なく言い、瑛一は言葉を失う。
玉響の母も、亡くなる何日か前から眩暈や頭痛に襲われていた記憶がある。そこからあっという間で、倒れたときに呼んだ医者からはおそらく脳の病気だろうと言われた。
もしかしたら、今すぐに病院へ行けば助かる可能性もあるのかもしれない。しかし、玉響にその選択をする意思はない。そうまでして生きたいと思わないからだ。