純潔花嫁―無垢な新妻は冷徹社長に一生分の愛を刻まれる―
「まさか玉響さんが病気だったなんてね……」
「俺も全然気づきませんでした……」
亡くなる数日前から月のものが来たと偽っていた玉響は、最後に瑛一が来た日以外はいわゆる生理休暇を取っていた。兼聡も髪を結うことはなかったので、睡は「無理もないですよ」と苦笑した。
しんみりとした雰囲気を変えるように、睡はしっかりと目線を上げる。
「姉さんのことは、私も時雨さんも絶対に忘れない。月並みだけど、やっぱりそれが一番の供養になるんじゃないかなと思ってる」
「そうだね……。瑛一さんの心からも、きっと消えはしないよ」
しっとりと言う四片を、睡は複雑そうに見つめる。
あれから瑛一は、すぐに四片と会って想いを伝えたらしく、彼女は夢のようだと喜んでいた。
ただ、瑛一と玉響は恋仲でなかったとはいえ、特別な関係であったのは確かだ。好きな人の過去の女性関係は気になってしまうだろう。
悩んでいるのではないかと懸念したものの、四片の表情は曇りもなく凛としている。
「でも、そういうのも全部ひっくるめた瑛一さんが好きだから、一生ついていきたい」
どうやら心配はいらないらしい。強い意思を持っている彼女に胸を打たれ、睡は安堵の笑みをこぼした。