純潔花嫁―無垢な新妻は冷徹社長に一生分の愛を刻まれる―

(もう、まんまと手の平で転がされちゃって恥ずかしい……。でも〝そそられた〟ってことは、ちょっとは動揺したのよね?)

 元花魁の名に恥じなくてよかった、などとよくわからないことを思っていると、素っ気ない声が投げかけられる。


「ふざけていないで早く寝ろ」
「人のこと言えないでしょう」


 ぼそっと言い返し、睡も横になって布団を被る。ようやく落ち着くと、これまで使っていた寝具と歴然の差があることに気づく。柔らかくて温かく、とても寝心地がいい。

 微妙な隙間を開けて時雨が寝ているが、思いのほか緊張はすぐに解け、目が冴えていたのが嘘のようにあっという間に眠気がやってくる。


「時雨さんの隣、あったかい……」


 うつらうつらしながら呟くと、穏やかな声で「そうか」とだけ返ってきて、安堵に包まれながらゆっくり瞼を閉じた。


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