純潔花嫁―無垢な新妻は冷徹社長に一生分の愛を刻まれる―
独占熱望
朝の気配を感じて時雨が重い瞼を開けると、目の前にあどけなさの残る寝顔があり、ぎょっとして一気に覚醒した。腕は柔らかな身体をしっかりと抱きしめている。
そういえばと、夜中の出来事を思い出す。
あれほど眠れないと言っていた睡はベッドに入るとあっさり眠りに落ち、逆に時雨のほうが寝つけなくなっていた。
とりあえず瞼だけ閉じていると、寝返りを打った彼女がベッドの端に転がっていくのに気づき、落ちる寸前で咄嗟に抱き寄せた。
本当に子供みたいだなと、呆れつつも胸のくすぐったさを感じてしばし彼女を眺めていると、ようやく睡魔がやってきて、気づけば今に至る。
うぶかと思えば色香の漂う顔を見せたり、それとはまた違う憂いのある大人びた表情をしたりする。素直に気持ちを口にするし、階級社会の廓にいたというのにまったく擦れていない。
時雨は特別だと言い、背中の痣を見るだけでとても恥らう姿も、未熟なくせに花魁になりきって甘えてくるのも、素直に可愛らしいと思った。
(吉原から出してやってよかったんだよな……?)
穢れのないまま一般の世界に戻してやれてよかったと思う反面、父親との過去を知ると余計なことをしてしまっただろうかと少し罪悪感を覚える。