純潔花嫁―無垢な新妻は冷徹社長に一生分の愛を刻まれる―

「峯村哲夫という男の身辺を探ってもらいたい」


 時雨の口から出た、つい先日も聞いた苗字に、茨は不思議そうに目をしばたたかせる。


「峯村? この間の睡って子も峯村だったよな。まさかその子を捜してた父親?」
「ああ……もしかしたら陰で社会的な背信行為をしているかもしれない。ただの勘だが」


 睡の幼少期の話を聞き、時雨は哲夫に対して疑惑を抱き始めていた。

 時雨に睡の件を頼んだのは、自分では手が回らない東京方面を探してもらえると思ったからだろう。しかし、それほど彼女に執着しているのに、いくら伝手がなかったといえ約十年もの間なにもせずにいられるだろうか。

 もしかしたら、警察に届け出た話自体が嘘だったのかもしれない。いろいろと調べられたら、睡を監禁していた事実を知られることも十分ありえるのだから。

 人形偏愛症が行きすぎた者が、愛でる対象を失くしたまま生活ができるのかも疑わしい。大抵は依存するものではなかろうか。

 そうだとすれば、別の女子を身代わりにすることで欲を満たしている可能性もある。なにかしらの証拠を掴めれば、睡を渡さずに峯村をやり込めることができるのではと考えたのだ。
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