純潔花嫁―無垢な新妻は冷徹社長に一生分の愛を刻まれる―
愛縁蜜月
これほど強い衝撃を受けたのは、人生で二度目だ。
一度目は初対面の相手に身請け話を出されたとき。そして今、あのときの男性に求婚を迫られている。睡の脳内は一気に大騒乱と化しているのだが、実際は唖然としてたどたどしく言葉を紡ぐことしかできない。
「結婚……するってこと、ですか?」
「ああ」
「時雨さんと、私が?」
「そうだ」
若干震える声で確認する睡に、時雨は淡々と答える。その瞳はいつもと同様に冷静だが、揺るぎない力強さも湛えている。
「峯村社長には話をつけてきた。事業についても心配いらない。ただ、義父との関係を断ち切ることで身寄りがなくなってしまうから、俺が君を娶る」
時雨の大胆な決断に、睡の胸に熱いものが込み上げた。
哲夫と完全に関わらないようにするためには、縁を切るのが一番だろう。どうにか絶縁してひとりで生きていく選択もあると、睡は時雨の帰りを待っている間に考えていた。
しかし彼は、この家を睡の居場所にしようとしてくれている。ただ場所を提供するだけではなく、新しい戸籍を作ってまで睡をひとりにさせないつもりだ。