純潔花嫁―無垢な新妻は冷徹社長に一生分の愛を刻まれる―
「はい、結婚祝い。富山名物の鱒寿司と、越中瀬戸焼の湯呑。ぜひふたりで使って」
「……どうも」
「富山ってやっぱり海の幸が美味いねぇ。高級旅館は対応が違うし、温泉もよかったし」
「存分に楽しんできたようでなによりだよ」
最初は乗り気ではなかったはずがちゃっかり贅沢をして帰ってきた茨に、時雨は呆れた笑いをこぼした。しっかり目的は果たしてくれたので、なにも文句はない。
茨はさらに、もうひとつの紙袋を睡に渡す。
「睡ちゃんにはこれも」
「わぁ、駄菓子がいっぱい! ありがとうございます」
中にはたくさんの駄菓子が詰め合せられており、時雨は呆れ返っている。時雨が言っていた『見た目に反して子供みたいなやつ』というのはこういうところかと、睡はおかしそうに笑った。
食堂に集まると、皆で乾杯をして食事を楽しんだ。時雨の厚意で菊子も一緒に席について家族団らんのようなひとときを過ごし、睡は心もたっぷりと満たされていた。
食後の生菓子を用意する頃、心英社の社員から電話がかかってきて時雨は席を外す。茨は頬杖をついて彼の姿を目で追い、感慨深そうな表情を見せる。