純潔花嫁―無垢な新妻は冷徹社長に一生分の愛を刻まれる―
「日本人は奥ゆかしいというか、なんというか……」
両手で顔を覆って呟く睡に、時雨はおかしそうに笑って布団をめくる。
「君がどんな反応をするか気になってやってみたが、俺たちには関係ない。初夜といっても、共に寝るのが初めてではないのだし」
「そ、そうですよね」
さっさとベッドにもぐり込む彼に睡もぎこちなく笑って返したが、胸にかすかに隙間風が吹き込んだ気がした。
いざ色っぽい雰囲気を感じるとどぎまぎしてしまうくせに、なにも起こらないとなるとそれもまた物寂しい。心のどこかで、名実共に夫婦になれるのを期待していたのだろうか。
わがままな自分を面倒だなと自嘲して、彼に背を向けて横になり布団をかけた。
直後、衣擦れの音と後ろで動く気配がしたかと思うと、逞しい腕が身体に回される。
「でもまあ、夫婦らしいことをするのも悪くないか」
背中に男らしい胸板が密着し、耳のそばで甘さを含んだ声が囁いた。
男の腕に初めて抱きしめられた睡は、その包容力に息が止まりそうになった。薄い布越しに心臓の音が伝わってしまいそうなほど、鼓動が激しい。