この恋が手遅れになる前に
私まで顔が赤くなる。初めての相手に乱されてしまった自分が恥ずかしい。
「慣れてないから奏美さんを騙して連れてくるしか思いつかなくて……本当にすみません……」
「本当に初めて? セフレがいるとかじゃ?」
「そんなのいませんって! 誘い方も演技も下手だったでしょ?」
開いた口が塞がらない。その下手な演技で騙されて家に入ってしまったのに。
「童貞……」
「繰り返さないでもらえます?」
驚く私に涼平くんは恥ずかしそうに俯く。
「ずさんな計画で奏美さんに引かれるかなとは思ったんですけど……政樹さんに言われたからってメイク落としまで用意しててキモかったですよね……」
落ち込んだ顔をする涼平くんと同じくらい落ち込む。
私って本当にチョロい女じゃないか……。
「部長と付き合ってる奏美さんを見ているうちに色々と拗らせちゃって……何もかも焦って……もういっぱいいっぱいで……」
しどろもどろになる涼平くんから目が離せない。
「あの……奏美さん」
私を呼ぶ声に意識を持っていかれる。
「自分を押さえるのに必死なんです。だから早く俺を好きになってください」
真っ赤な顔をした涼平くんの力強い言葉に体が固まる。私はとんでもない男と関わってしまったのではないだろうか。
「わ、私はこの関係を終わらせて元に戻りたいのに……」
一瞬涼平くんが動揺したように見えたけれど、すぐに私に微笑んだ。
「俺、やっぱり部長の代わりの男になるのは嫌です。奏美さんの一番大切な人に早くなりたい」
「でも……」
その先に続く言葉が浮かばない。
こんなに熱烈に気持ちを伝えられたら、弱った私は落ちてしまう。また私は誰かに愛されるような女になれたと思うと安心する。
「あの……急かさないで待っててくれるのなら……涼平くんの気持ちに向き合ってみようとは思う……」