この恋が手遅れになる前に

「私……酔ったみたいだから外の空気吸ってくる……」

立ち上がると店の出口まで移動する。
ドアを開けると夜風が気持ちいい。

加藤さんの隣で笑う涼平くんの顔が頭から離れない。このままあの二人が付き合ったりしたらどうしよう……。私また振られるのかな……。
振られる? まだ正式に付き合ってもいないのに?
というか、これってまるで妬いているみたいじゃないか。

私、涼平くんのことが好きなんだな……。

「奏美」

振り返るとお店のドアから章吾さんが出てきた。
突然現れた彼に驚いた。営業部長なのだから今日の打ち上げに章吾さんが参加するのは当たり前だ。それなのに今まで章吾さんがいることに気がつかなかった。私の中で章吾さんの存在がなくなっている。今の今まで意識することすらなくなっていた。
もう私の頭の中は涼平くんでいっぱいなのだ。

「どうしました部長?」

「奏美が元気ないように見えたから追ってきたんだよ」

意外な理由に目を見開く。この人はまだ私を気にかけている。でももうそのことを嬉しいとも何とも思わない自分がいる。

「少し疲れただけです。お気遣いありがとうございます」

「今日は大変だったんだってね」

フラワータワーで揉めたことを言っているのだろうか。

「ええ」

「もう本田くんから離れた方がいい」

「え?」

「奏美には合わないよ」

章吾さんの言葉に動けなくなる。
繁華街の人通りの多い時間に外にいるのに、まるでこの店の前だけ時間が止まったかのようだ。

「そ、そんなこと部長に言われたくないです……」

「このまま俺と二人で店を変えよう」

「え?」

「やっぱり無理だった。奏美と離れるのは辛い」

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