そして、僕がみえなくなったら
「伊月!!早く!!早くしないと………っ早く、しないとここはっ」



重機の音は、もうすぐ側から聞こえていた。



「ここから先、僕は実和と一緒に行かないよ」


「…………っ、どうして!!」


「一人で行くんだ。一人でここを出て、そして、僕が見えなくなったら」


「何を言ってるの?ねぇ、伊月!!早く一緒に………」



「何してんだよ実和!!!危ねぇだろうが!!」




グイッと腕を後ろに引っ張られ、私の体は旧校舎の外へと飛び出す。









「そして、僕が見えなくなったら、
もう僕のために泣いたりしないで。

僕のこと、忘れていいよ、実和」









ズシャッ


大きな音と同時に、目の前でショベルが旧校舎の屋根を勢いよく潰した。


古く腐った木々でできた旧校舎は、真ん中が潰されたことにより、一気に崩れだす。



それはあまりにも一瞬で。


ついさっき、私がいた旧校舎の入り口も、大きな木材が崩れ落ちて跡形もなくなってしまった。





嘘………。

嘘だ………嘘って言ってよ………。



「実和!!!離れろって!!!」

「離して……!!まだ中には伊月が!!伊月がいるのに何で………っ!!」




嫌だ。


ダメ。


そんなのってあんまりだ。



「このままじゃ伊月が潰れちゃう………っ」












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