そして、僕がみえなくなったら
放課後、私は鞄を持って今は使われていない旧校舎へと向かう。


透明人間になってから、伊月は旧校舎で過ごすようになった。



家に帰っても誰も自分が見えないし、

学校は、夜はいいけど昼間は人にぶつかってしまうからと、誰も来ることのない旧校舎で一人私を待っている。



床板の腐敗が進み、歩くたびにキシキシいう旧校舎に私は慣れた足取りで入っていき、1年2組の教室でぼんやりしている伊月に会いにいく。



「伊月!!」

「実和。お疲れ」



埃っぽい空気の中で、伊月は不透明だ。

はっきりと私の視界に映る姿に安堵する。


ほら見ろ勇大、伊月はちゃんとここにいるよ。



「伊月、お腹すいてない?お菓子食べる?」



鞄からチョコを取り出し、伊月に差し出す。

伊月はうーんと、困った顔をして、お腹をさすった。



「さっきコンビニでおにぎり食べたからなぁ……。今はお腹いっぱいなんだよ」



ごめんね、って謝る伊月に仕方なくお菓子を鞄にしまった。

お腹いっぱいなところに無理して食べさせるようなものでもない。
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