そして、僕がみえなくなったら
「とにかく!やるの!旧校舎で勉強会!」

「やだね。お前と勉強するくらいなら、教科書食った方が覚えるわ」

「覚えるわけないでしょ!馬鹿!」

「お前とやっても覚えるわけねぇんだよ!阿呆!」


あーもー!



「伊月がいるから大丈夫だってば!!」



勇大があまりにもわからずやだから、伊月の名前を出してしまった。


伊月が透明人間になってから、伊月の話題を出すとみんな困った顔をして、だから私もあえては言わないようにしてたんだけど………。



「……………伊月はいねぇって言ってんだろ」

「………っ。いるよ!!旧校舎にいるんだってば!!」



勇大の言葉にムッとする。

あんなに一緒に過ごしたのに、こんなにも綺麗に忘れてしまえるものなの?


薄情だよ、勇大は。

伊月の寂しそうな顔、知らないからそんなこと言えるんだ。



「いないやつとなんか勉強できるかよ!」

「なんでそんなこと言うのさ!!伊月はちゃんといるのに!!」

「目を覚ませよ!!!」

「それは勇大の方でしょ!!!」



バチバチの火花を散らして、私も勇大もお互いを睨み合う。


最低だよ、勇大。

伊月が聞いたらきっと悲しむことだろう。


もう、勇大なんか誘わない……っ。



「一人で赤点取っても知らないから!!!」



ふんと鼻を鳴らし、自分の席に着く。


早く旧校舎に行きたかった。

伊月の笑顔でも見なきゃ、このモヤモヤとした気分は晴れそうにない。
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