そして、僕がみえなくなったら
「それにね、みんな勇大の肩持つの」


あの後、みっちゃんに言われた。



『勇大のこと怒らないでやって』って。

『勇大だって辛いんだから』って。



そりゃ、伊月に教えてもらわずにテストでいい点とろうなんて、よっぽど辛い勉強しなきゃ無理だよ。当たり前だ。


だから私は提案したのに。



それを蹴ったのは勇大の方だ。



「伊月は私と勇大が揉めたら、正当な方の味方についてくれたのに」



伊月がついた方が正しいんだって、だから私と勇大は喧嘩してもお互いに謝ることが出来た。


伊月は非を、ちゃんと非として指摘できる人だから。



「……んー、でも。実和は指摘すると泣くからなぁ」

「そ、そんなこと……」

「だから、勇大はよく折れて謝ってたと思うよ。実和の涙に弱いから」



…………そうだっけ?

あんまり記憶にないんだけど。



「僕も、だけどね」



ふっと笑った伊月に、胸がキュッとなる。

その締め付けに気付きたくなくて、私は伊月から目を逸らした。
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