呪われ聖女、暴君皇帝の愛猫になる 溺愛されるのがお仕事って全力で逃げたいんですが?

第3話



 ◇

 ユフェが妖精猫であるという話は雷帝であるイザークと側近であるキーリとカヴァス、そしてロッテの四人のみに知られている。
 シンシアはこれまでと変わらない猫生活を送っていた。

(実際のところ、私はただの呪われた聖女なんだけどね)
 処刑を回避したいがために妖精猫説を否定しなかった。自らが吐いた嘘ではないが、欺していることに変わりはないので良心がチクチクと痛む。

 懺悔の気持ちも込めてシンシアがティルナ語で祈りを捧げていると遠くから足音が聞こえてくる。程なくして扉が開き、現れたのは飼い主であるイザークと分厚い蔵書を抱えたキーリだった。


「ただいまユフェ。今回は予定より一時間も早く休憩に入ることができた」
『イザーク様、お帰りなさい。二時間前に朝食を済ませて仕事に向かわれたばかりなのに。……いえ、貴重なお時間を作っていただきありがとうございます』

 シンシアは内心苦々しい気持ちになったが顔色一つ変えずに礼を言う。
 ユフェと話せると分かってからイザークの猫愛がさらに重くなった。仕事の処理速度が以前より加速し、一緒に過ごす時間が増えたのだ。


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