呪われ聖女、暴君皇帝の愛猫になる 溺愛されるのがお仕事って全力で逃げたいんですが?


「さて。そろそろ新しい猫グッズを注文するとしよう」
『えっ!? この部屋にはたくさん猫グッズがありますし、一週間前に最高級品のブラシを買って頂いたばかりですよ!?』
「それもそうか。では職人に頼んでいくつか首につける宝飾品を作らせよう。宝石は何が良い?」
『結構です。私は充分良くして頂いてますし、森の宴がとっても気に入っているので、これをずっとつけていたいです!!』

 猫馬鹿を炸裂させるイザークをシンシアはやんわりと窘める。妃に贈るはずの森の宴ですら猫に与えてしまっているのだからこれ以上高価なものを贈られても困る。
 それでも食い下がるイザークを必死で説得していると、こめかみを押さえながらキーリが横やりを入れた。


「いい加減にしてください陛下。ユフェ様の仰る通りです。このところ僕の屋敷に荷物が届くと思ったら全部あなたが僕名義で注文した猫グッズばかり。いえ、そのことに関しては目を瞑りましょう。ですが(まつりごと)席で重要資料に紛れて猫用カタログを忍ばせないでください!」
 注意されたイザークは不服そうに口を尖らせた。
「キーリはいつから舅になった? 仕事中に表紙を眺めているだけだ。中身は見ていない。これくらい許せ」
「皇帝陛下の沽券に関わるでしょう!? あと個人的なお金だからとやかく言うつもりはありませんけど、最近浪費が酷いです」


 キーリの言うとおり、部屋には猫用グッズが一段と増えた。シンシアがおもちゃで遊ぶことはないので代わりに運動できるように棚を設置したり、家具を増やしたりして結果的にスペースがなくなり始めている。

「心配しなくても自分の決めた金額内で収めている」
「いいえ、どう見たって財布の紐はガバガバです。大体、あなたは昔から――」

 金銭感覚の違いで口論する夫婦みたいだな、とシンシアは微苦笑を浮かべる。
 イザークの主張から国庫のお金は手をつけていないので良いのかもしれないが、もっと別に使い道があるはずなのでそちらに使って欲しいと思う。

< 119 / 219 >

この作品をシェア

pagetop