呪われ聖女、暴君皇帝の愛猫になる 溺愛されるのがお仕事って全力で逃げたいんですが?


「二人とも痴話喧嘩はその辺にして。そろそろ時間だよ」

 すると突然、第三者の声が割って入った。
 入り口に目をやればカヴァスが腕を組んで立っている。相変わらずきらきらしい雰囲気を纏っていて、いけ好かない感じがした。

(そう言えば、側近騎士っていうけど、カヴァス様はちっともイザーク様の側にいないわ)
 常に行動を共にしているキーリと違って、宮殿内での彼はよく女性陣と話している印象を受ける。護衛も仕事のうちの一つであるはずなのに、それで良いのだろうか。

(まあ、雷帝に面と向かって襲いかかる大胆不敵な人なんていないわね。有事の時でもなければ、カヴァス様が側で仕える必要はないのかもしれない)

 カヴァスはキーリの肩に手を置いて、もう片方の手の人差し指を立てるとキーリに忠告をする。

「君が生真面目なのは分かっているけど、それで我を忘れるのは良くないよ。時計を見てみると良い。陛下と中央教会のヨハル殿の約束が迫ってる」
 正論を言われて言い返せないでいるキーリは口を引き結ぶとポケットから懐中時計を取り出して時間を確認する。

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