呪われ聖女、暴君皇帝の愛猫になる 溺愛されるのがお仕事って全力で逃げたいんですが?
浄化の力が使えるのは聖女であるシンシアのみ。
このまま発生が続き、周辺集落に被害が出ればいよいよ領主が教会の扉を叩くだろう。その時、聖女がいないと分かれば、ヨハルの立場がさらに悪化してしまう。
『早く元の姿に戻っておく必要があるのね。聖女がいないってバレたらそれこそ大事だし。いつでも浄化の要請に対応できるようにしておかないと』
「現状、瘴気が滞留することはなく、時間が経てば消えるので安心してください。ヨハル様も心配ですが私はあなたも心配です。陛下の怒りを買っている上、欺して愛猫になっているんですから」
意図的に欺したつもりはない。いろいろなことが重なって結果的に彼を欺したことになっているだけだ。
シンシアは反論したかったがルーカスが心から心配しているのが分かったので何も言えなかった。
「陛下の機嫌が直るまで、シンシアが人間に戻ることは得策ではありません。大事な幼馴染みが処刑だなんて考えただけで胸が張り裂けそうになりますよ」
『でも……』
できることなら今すぐ教会に帰って人間に戻りたい。
なんとか理由をつけてルーカスを説得しなければ。
しかし頼み込む前に、無情にも騎士がルーカスを呼んだ。
ルーカスは「折を見て必ずあなたを助けます」と小声で言い残すと騎士の元へと駆けより、談笑しながらそのまま歩いて行ってしまった。