呪われ聖女、暴君皇帝の愛猫になる 溺愛されるのがお仕事って全力で逃げたいんですが?
第3話
次の日、仮宮内に足を運べば、二人の話題で持ちきりになっていた。聞かないよう努めても、意識してしまっているせいで嫌でも耳に入ってくる。
昨日からシンシアの胸の中はよく分からない感情に苛まれいった。
チクチクとした痛みは次第に変化して苛立ちと焦燥感が綯い交ぜになったもやもやで埋め尽くされている。
極めつきは二人が廊下を仲睦まじく歩いている様子を部屋から目撃した時で、あの時はあんぐり口を開けたまま立ち尽くしてしまった。
(ユフェはこの世で一番も尊いとか言っていたけど。やっぱり猫よりも令嬢の方が一番なんじゃない!)
ユフェが部屋からいなくなって少しは寂しがっているのかあれからロッテに尋ねたところ、報告書は出してもなしのつぶてだという。
――イザーク様の薄情者!!
結局、猫よりも令嬢の方が大切なのだ。
(人間の女性と猫を比較するなんて間違っているけど。もう少し寂しがってくれたっていいんじゃないかな?)
仕事が終わって宿舎に戻ったシンシアはベッドに腰を下ろすと、枕を抱きしめて物思いに耽っていた。
「シンシア大丈夫?」
どうやら扉が開きっぱなしになっていたらしい。
顔を上げると、心配そうにロッテが入り口のところで立っていた。
いつものお仕着せではなく、レモン色のドレスでスカートの裾には可愛らしいチューリップ柄が刺繍されている。
今日のロッテは非番だったと頭の隅でぼんやり思い出していると、こちらに近づいてきたロッテにいきなり両肩を掴まれた。