呪われ聖女、暴君皇帝の愛猫になる 溺愛されるのがお仕事って全力で逃げたいんですが?
エピローグ
第1話
鬱蒼とした森の前でシンシアは佇んでいた。
後ろには心配そうにこちらを窺うリアンとヨハル、そして護衛騎士の姿がある。
「本当に一人でネメトンへ行かれるんですか? 守護の神官をつけて向かった方が良いと思いますよ」
「大丈夫よリアン。リアン特製の魔物対策の道具もばっちりだから、自分の身くらい自分で守れるわ。今から一瞬だけ守護の結界を解くから魔物がこちら側に来ないか注意してね」
シンシアは自分が通る部分だけ結界を解くとネメトンに足を踏み入れた。同時に、背後に何かの気配を感じる。
不思議に思って後ろを振り向くも、向こう側に魔物が侵入した様子はなくヨハルたちがいるだけだ。
単なる気のせいのようだ。
シンシアは自分自身の周りにも結界を張ると、皆に手を振って目的の場所へ向かって歩き始めた。
一連の騒動の後、ベドウィル伯爵と一族はキーリによって捕まった。伯爵の屋敷からは黒魔術の写本や魔瘴核の欠片、そしてその研究にまつわる書類が大量に見つかった。
これから余罪の追及が行われるが、既に数々の罪を働いていることから重刑は免れないだろう。
一族の中でただ一人、ルーカスだけはイザークではなくヨハルによって先に裁かれた。
リアン曰く、イザークよりも敬愛するヨハルに裁かれる方がよっぽど身に応えるからだという。
当然のことながらルーカスは階位を剥奪され、組紐文様の肩掛けは没収された。魔力濃度が薄くて魔法が使えない辺境地の教会で一から修練を積むことも決まった。