呪われ聖女、暴君皇帝の愛猫になる 溺愛されるのがお仕事って全力で逃げたいんですが?
「まったく。猫馬鹿も大概にしてください」
キーリは自分の名前を使って何かと猫グッズを取り寄せるイザークに頭を悩まされていた。
あの恐ろしい雷帝が猫に心酔しているなど、各方面で雷帝たるイメージが崩壊してしまう。世間体を考えれば自分の名前を使うことでイザークの体面が保てるのだから安いものだ。
そう思って名前を使わせていたのに、まさかここまで好き勝手されるとは思っていなかった。
嫌味の一つは言いたくなる。
どこ吹く風のイザークは、キーリから手渡されたお茶を一口啜った。
「ところで陛下。森の宴をユフェ様の首飾りにすることをもう一度考え直していただけないでしょうか? あれは我が帝国の秘宝です。代替案として、世にも珍しい桃色の大真珠を首飾りにされてはどうですか?」
森の宴は魔力を注げば相手がどこにいるか分かるという番石でもあり、非常に価値のある品だ。もちろん大真珠も森の宴に続いて国宝だが、価値は二倍ほどの差がある。
本来なら大真珠すら猫の首飾りにはしたくない、というのがキーリの本音だ。だが、それよりも価値を下げればイザークが納得しないだろう。
提案を聞いたイザークはキーリを一瞥するとカップをソーサーの上に置いた。それから静かに問う。