呪われ聖女、暴君皇帝の愛猫になる 溺愛されるのがお仕事って全力で逃げたいんですが?
小話 リアンのお悩み相談室
リアンは信者たちの懺悔(悩みごと)について話を聞くため懺悔室へ向かっていた。
聖堂内にある小さな部屋で、格子の入ったパネル越しに信者たちが日々抱え込んでいる罪(悩みごと)を聞いて赦すのが仕事だ。
(嗚呼、大変。来るのが遅れてしまったわ)
遅れてしまった理由はただ一つ。
この国唯一の聖女・シンシアとお風呂の攻防で時間が掛かってしまったからだ。
今日は事前にロープを張っていたおかげで彼女に逃げ切られる前に捕獲するができた。その後はお風呂場まで連行し、他の修道女の手を借りてなんとか身体を清めることができたのだが、既にもう身体はへとへとだ。
懺悔室に到着して急いで中に入ると、幸いまだ人はいなかった。
椅子に座ったリアンは肩に手を置いて首を鳴らす。
(はあ。私ももういい歳だから、若い子の体力にはついていけないわね)
ふうっと小さく溜め息を吐いていると、早速向かいの部屋に誰かが入ってきた。
室内は薄暗く、パネルの格子の幅が広いためはっきりと相手の顔は見れない。
リアンは相手が椅子に座るのを確認してから、穏やかなお声で話しかけた。
「精霊女王と精霊のみ名において――あなたの罪を告白してください」
リアンが告げると相手の方も同じ内容を口にする。
「精霊女王と精霊のみ名において――わたくしの罪を告白します」
声質からして十代半ばの女性と推定される。リアンが「どうぞ」と話すよう促せば、女性は気後れしているのか少々躊躇いながらもゆっくりと話し始めた。