呪われ聖女、暴君皇帝の愛猫になる 溺愛されるのがお仕事って全力で逃げたいんですが?
「ですが、どんなにアプローチをかけても彼はちっとも振り向いてくださらない。というか恋愛に興味がない仕事馬鹿というやつなんです。多くの人の生活を支える立派な仕事をしていらっしゃるのですが、自分のことはいつだって二の次三の次で……」
「それはなかなか難攻不落なお人ですね。アプローチは一体どのようなことを?」
尋ねると、女性が胸を張るシルエットが見えた。
「良い奥さん大作戦を決行しましたの! 彼の健康を想ってわたくしが育てた野菜を送りましたわ。この間はお手製青汁を持っていきました!!」
リアンは目が点になった。
いや、それは何かズレていないだろうか。
相手の胃袋をがっしりと掴むためにお手製料理を作る令嬢はそれなりに存在する。普段料理などしない身分のある令嬢が、自分のためにわざわざ作ってくれた手料理……。それに心揺れ動く殿方は多いと聞く。
しかし、いくらお手製だからと青汁を持って行くとは予想に反して斜め上の行動だ。
(野菜、青汁……なんだか聞き覚えのあるフレーズね)
リアンは備え付けテーブルに手を置き、人差し指をトントンと叩いて考え込む。
やがて頭の中で鮮明にある人物が浮かび上がり、ハッとなった。