呪われ聖女、暴君皇帝の愛猫になる 溺愛されるのがお仕事って全力で逃げたいんですが?
フレイアに魔法を教えていた頃を思い出す。
才能のあるカヴァスと違い、フレイアにはそれがなかった。植物をまったく操れなかったのだ。
一部の意地悪な使用人からはフォーレ公爵家の落ちこぼれだと揶揄されていたとカヴァスが悔しそうに言っていたことをよく覚えている。
しかしその一年後、フレイアはたゆまぬ努力を続けたお陰で植物を操る魔法をついに修得した。そして彼女に陰口を叩く者はいなくなった。
「忍耐力は人並み以上あるし、努力を惜しまない子だから相手にもその想いがいつか伝わると良いんだけど」
リアンはフレイアを想いながら、ティルナ語で祝福の言葉を贈ることにした。
「――あのう、懺悔をしても宜しいですか?」
今度やって来たのは中年の男性のようだった。もう中に入っても良いのか分からず、躊躇っているようだ。
「はい。もちろんですとも」
「ああ、それなら良かった……!」
相手が椅子を引いて腰掛けるのが分かるとリアンは穏やかな声で話しかけた。
「精霊女王と精霊のみ名において――あなたの罪を告白してください」