呪われ聖女、暴君皇帝の愛猫になる 溺愛されるのがお仕事って全力で逃げたいんですが?


 翌日、シンシアは朝からぐったりとベッドの上に横たわっていた。

(身体が怠い。眠くて眠くて堪らない。ううっ、ここまで猫体質になってしまうなんて予想外。中途半端な呪いのくせにこういうところはちゃっかり掛かってるんだから……。私の、私のパンケーキが……)

 悪態を吐きながらベッドから這い出して歩き始めるものの、瞼が重たい。
 頭を何度も横に振り、パンケーキを食べるという強い意思(食い意地)のもと必死に足を動かしていく。

 ――が、部屋を出る前にとうとう睡魔に完敗してしまい、入り口の手前で眠り込んでしまった。


 まどろむ意識の中で、温かい何かに包まれる感覚を覚える。
 次にふわりと身体が浮いて、まるで雲の上に乗っているような気分だった。

 嗚呼、とっても心地が良い。この雲があればどこへだって飛んでいける気がする。
 これがあれば宮殿を出て、教会にだってひとっ飛びできる。そうすれば、神官に解呪してもらえるし、すぐに元の人間の姿に戻れる。

(元の姿に戻れば、心配してくれている修道院の皆が安心して喜ぶわ)

 ふふっと笑うシンシアは、ふわふわと綿飴のような甘い世界へと落ちていった。

< 217 / 219 >

この作品をシェア

pagetop