呪われ聖女、暴君皇帝の愛猫になる 溺愛されるのがお仕事って全力で逃げたいんですが?
いてもたってもいられなくなってイザークの膝の上から飛び降りる。
すると、暫く黙り込んでいたイザークが低い声でキーリに言った。
「……失踪した聖女・シンシアを見つけ次第、即刻俺の前に連れてくるんだ。彼女には――いろいろと言いたいことがある」
含みのある言い方にシンシアはドキリとした。
一方でキーリは顎に手を当てて神妙な顔をしている。
「確かにそうですね。彼女は戴冠式以降、宮殿の式典の参加を避けていて、一向に陛下と顔を合わせないようにしています」
それはイザークの逆鱗に触れないように立ち回った結果だ。これ以上、うっかり粗相なんてすれば処刑は免れない。
キーリは掛け直した片眼鏡を光らせた。
「これを機に陛下の前に引きずり出せればいいですね。はっきりすっきりするためにもそれが絶対に良いですよ」
さすがは雷帝の次に敵に回してはいけない男。随分と手荒な真似である。そして一体何をはっきりすっきりさせたいのか分からなくてシンシアは首を傾げた。
キーリはうんうんとどこか納得する様子で続けざまにこう言った。