呪われ聖女、暴君皇帝の愛猫になる 溺愛されるのがお仕事って全力で逃げたいんですが?
第7話
イザークは扉の前で失神しているシンシアを優しく抱き上げた。
「ユフェは疲れて眠ってしまったらしいな」
「いえ、恐ろしい顔面にやられて気絶したのでは? わざとそういう顔つきをしているのは分かりますけど、動物や令嬢の前までそれをするのは如何なものかと……」
やや呆れ顔のキーリは溜め息交じりに突っ込みを入れる。
「この顔つきでないと雷帝たる迫力に欠けるだろ」
「もともと目つきが悪いのでそこまでしなくても充分畏怖の対象ですよ。今みたいに人前でデレデレなのも困りますけど」
雷帝らしい恐ろしげな顔つきから一転して甘い顔つきになったイザークはユフェをベッドの上に寝かせた。
ふわふわの金茶の毛並みに赤褐色の縞模様。人差し指でつつきたくなるようなピンクの鼻、手足は白くて靴下を穿いているみたいで愛らしい。
最初この猫に触れられた時は心底感動した。それと同時にこの生き物が猫ではないかもしれないという考えも頭を過った。
何故なら猫アレルギーのイザークに例外の猫などいないからだ。
猫に触れると目が充血して痒みに襲われる。さらに症状が悪化するとくしゃみが止まらなくなるのだ。
この秘密を知っているのは側近たちだけで他の者は誰一人として知らない。彼らは幼馴染みなので裏切られる心配はない。