呪われ聖女、暴君皇帝の愛猫になる 溺愛されるのがお仕事って全力で逃げたいんですが?


 イザークは思案する素振りを見せると側近の名を呼んだ。
「お呼びですか陛下?」
 応えるようにキーリの隣には騎士服に身を包む青年が忽然と現れた。

 焦げ茶色の髪に切れ長のアイスブルーの瞳。右の目元には色気漂うほくろがある。女性が黄色い声を上げ、秋波を送るような魅力的な容姿の持ち主、側近騎士のカヴァスだ。

「討伐部隊とは別で、秘密裏にシンシアの捜索をしてくれ」
 カヴァスは側近騎士であり、近衛第一騎士団の管理をしている。討伐部隊は近衛第一騎士団と第二騎士団から編制されているため、今回の聖女失踪の件は討伐部隊の隊長から報告を受けているはずだ。
 命じれば案の定、カヴァスは心得顔で短く返事をした。

「宮殿内ではいつも通りに過ごして構いませんか?」
 カヴァスはある程度自由を与えておいた方がきっちり仕事を遂行してくれる。
 何よりも情報を入手する能力に長けている。その能力を以てすれば恐らくシンシアの行方も掴めるだろう。

「好きにしろ。……カヴァスの腕に掛かっている。頼んだぞ」
「御意」

 返事をしたカヴァスは瞬く間にその場から姿を消し去った。

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