呪われ聖女、暴君皇帝の愛猫になる 溺愛されるのがお仕事って全力で逃げたいんですが?
キーリは片眼鏡を掛け直しながらカヴァスのいた場所をしげしげと眺める。
「陛下はカヴァスに少々寛容なのでは? あんな様子ですから近衛第二騎士団長からもっと真面目に仕事をさせろって苦情が来ています」
「あれは束縛すれば仕事をしなくなるタイプだ。反対に自由度が高ければ仕事は速いし、何よりも正確な情報を持ってくるのだからこれくらい問題ない。――それはそうと」
「何でしょうか?」
イザークはソファに腰を下ろし、肘掛けに肘を置いて長い脚を組む。
苦悶の表情を浮かべるイザークに、まだ何か懸念することがあるのかとキーリは固唾を呑んで見守った。
「ずっと考えていたんだが……ユフェの世話は侍女のロッテが適任だと思う」
「は?」
「本当なら世話は全て俺がしたいところだが、そんなことはできないからな。すぐに手配をしてくれ」
キーリはガクリと肩を落とすと「ああ、もう」と天を仰いだのだった。