呪われ聖女、暴君皇帝の愛猫になる 溺愛されるのがお仕事って全力で逃げたいんですが?
『……ひぎゃああっ!!』
シンシアは悲鳴を上げて飛び起きた。
どうやら悪夢を見ていたらしい。部屋は荒らされた様子もなく調度品や家具は連れてこられてきた当時と変わらない状態だ。
この状況も夢ならばさっさと覚めて欲しいし、早く教会へ戻りたい。
今ならヨハルの小言もリアンの説教も嬉しくて落涙しながら真摯に聞くだろう。しかし、教会へ今戻るのは賢明な判断ではない。何故ならイザークが血眼になって探している。
(見つかったら最後。私は柱に括り付けられて弓矢の的にされて死ぬのよ)
イザークの怒りが静まるまでは大人しく彼の愛猫として生活し、ほとぼりが冷めたら隙を見て教会に戻るしか策はない。
(嗚呼、ごめんなさい。討伐部隊の皆さん、そして修道院の皆)
多大なる迷惑を掛けてしまっている彼らに何度も頭の中で懺悔する。
せめて悪いものから身を守れるようにとシンシアがティルナ語で祝福のまじないを口にしていると、ベッドが突然沈み込んだ。