呪われ聖女、暴君皇帝の愛猫になる 溺愛されるのがお仕事って全力で逃げたいんですが?
「気に入ってくれたみたいで良かった。まだたくさんあるからゆっくりお食べ」
純粋な気持ちを口にする彼はやはりいつもと違ってどこにでもいる青年だった。威厳溢れる皇帝とは対照的な一面に、シンシアは一安心する。
(イザーク様もなんだかんだ血の通った人間てことね。猫にここまで優しくできるなら、人にも優しくしてくれるといいな)
しかし、その安堵は一瞬で消え去ってしまう。
「ユフェの側にいるためにも仕事は速く終わらせないといけないな。側に……。――シンシア」
イザークは眉間に皺を寄せ焦慮を露わにした。
シンシアはどこにいるのだろう。きちんと食事は取れているのだろうか。
怪我はしていないだろうか。ユフェを見ていると何故かシンシアを思い出して消息が気になってしまい、名前が口を衝いて出てしまった。
突然名前を呼ばれた当の本人は心臓が縮み上がる。
(な、なななんでいきなり私の名前を!? もしかして、捜索中の聖女が一向に見つからないから苛ついているの? 一刻も早く処刑したいと!?)
猫には優しくても人間にはとことん容赦がないことを思い知る。
やっぱりイザーク様は怖い!! とシンシアは再認識した。