呪われ聖女、暴君皇帝の愛猫になる 溺愛されるのがお仕事って全力で逃げたいんですが?
(監禁生活が続くとばかり思っていたけど。まさか自由に出入りできるようになるなんて)
イザークはシンシアが部屋を出入りしやすいように扉を少しだけ開けてくれた。これは大変ありがたい。
おかげで宮殿内をいろいろと探索することができるようになった。けれど人間の時ですら広大に感じた宮殿は猫の姿になるとより広く感じられる。
まだまだ宮殿内を把握できていないため、使用人や業者が使う外の出入り口が分からないが、地道に探索しているので着実に教会へ戻る計画は進んでいるはずだ。
(このまま調査すれば一週間以内に場所を突き止められるんじゃない? あの日以降イザーク様は私の話はしなくなったし、うまくいけばこの猫の生活ともおさらばだわ)
シンシアがソファの上で計画成功の妄想に浸っていると、ノック音と同時に扉が開いて少女が入ってきた。
爽やかな青のお仕着せに白のエプロンとキャップをつけた少女は一目で宮殿の侍女であることが分かる。
栗色のポニーテールがトレードマークの彼女は、歳はシンシアと同い年か一つ、二つ下で、くりくりとした瞳は榛色をしている。顔立ちは少々幼いがそれとは裏腹に所作はとても落ち着いていた。