呪われ聖女、暴君皇帝の愛猫になる 溺愛されるのがお仕事って全力で逃げたいんですが?
ランドゴル伯爵とは勇者と共に五百年前の魔王を倒した魔法使いのことだ。
魔王討伐時のパーティは勇者と聖女、そして二人の魔法使いだったという。ランドゴルの魔法使いはそのうちの一人で、普通の魔法使いと少し違う。
彼は動物たちを手なずけ、意思疎通できるという力を持っていた。
その力のお陰で五百年前の魔王軍との戦いでは人間だけでなく動物たちの力も合わさり、優位にことが進んだ。彼の功績はかなりのものだったと歴史書にも書かれている。
尋ねられたロッテは驚いてから二、三瞬きをした。
「ええ、その通りです。私はランドゴル家の者です。ユフェ様は猫なのに……やけに人間のことに詳しいんですね」
確かに猫が人間の事情に詳しいのはおかしなことだ。
ロッテに不審に思われたかもしれない。シンシアは慌てて言葉を付け加えた。
『わ、私は陛下の猫だもの! 帝国のことはなんでも知っておかないと彼の側にはいられないじゃない?』
胸を張って堂々とした態度を取っていれば信憑性が増し、大抵の人は欺されてくれる。聖女になりたての頃は勉強不足でこういったはったりをよく使っていた。
シンシアがさも当然のような口ぶりで言うのでロッテは「まあ、そうだったのですね」と、思惑通り納得してくれた。