呪われ聖女、暴君皇帝の愛猫になる 溺愛されるのがお仕事って全力で逃げたいんですが?
ロッテは宣言した通りイザークの前では猫思いの良い侍女を演じていた。
そして二人きりになればにべもなく世話を放棄される。仕事の評価は気にしているのか部屋の掃除など身の回りは清潔にしてくれるがそれだけだった。
女って怖い! と、ロッテの二面性を見る度にシンシアは心の中で叫んだ。
(いやまあ、人間相手と猫相手とで態度が違う顔面凶器のイザーク様も大概よね。この宮殿の人たちは本当に落差がある。表裏がないと生き残れない規則でもあるのかな?)
シンシアはもう何度目かの昼食抜きを経験しながら、窓辺の椅子に座って日向ぼっこをしていた。
朝食と夕食は必ずイザークと一緒に食べる、というよりも食べさせられるので餓死する心配はない。
昼食だけはロッテが用意することになっているが彼女は午前中に掃除を終わらせるといなくなってしまう。よって、シンシアは昼食を調達しに行かなくてはいけなかった。
時計の針を確認したシンシアは椅子から降りると廊下へと駆け出した。
「まあっ、ユフェ様じゃない!」
廊下を通りかかった数人の侍女がひょっこりと部屋から現れたシンシアに声を掛けてくる。