呪われ聖女、暴君皇帝の愛猫になる 溺愛されるのがお仕事って全力で逃げたいんですが?
第6話
「良いわよねえ、まだ一ヶ月と経っていないのに半年以上いるあたしたちよりも早くに出世するんだもん。ここに来てすぐに皇帝陛下付きの侍女になって、次に陛下が溺愛する猫の世話係。同じ伯爵家出身の私と違って優遇されて羨ましい」
「侍女長も侍女長ね。どうして特別扱いするわけ? 宿舎で一番広い角部屋を新人に与えるなんてずるい。本来あそこは成績の良い侍女にしか与えられない部屋よ。もうすぐ私の部屋になるはずだったのに!!」
侍女たちはロッテが受ける待遇や早い出世が許せないらしい。
後からやってきた新参者が自分以上の能力を発揮させると、ある特定の人間はそれが羨望から嫉妬へと変わる。
(きっとロッテだって、慣れないながらに努力して頑張ってきたと思うわ。……現状世話の放棄はされてるし口も利いてもらえないけど)
嫌われている相手ではあるが、やはり虐めの現場を目の当たりにして良い心地はしない。
気持ちが沈んでいると三人のうちの一人が手にしていた水差しをロッテの頭上に持ってくると、それを傾けた。
注がれた水は黒々とした汚水だった。