呪われ聖女、暴君皇帝の愛猫になる 溺愛されるのがお仕事って全力で逃げたいんですが?

 会議が終わり、一段落ついたタイミングで自分も話そうとしていたことがあったのだ。

 内ポケットにしまっていた小瓶を手に取ると机の上に置く。それはガラス製の小瓶で、キーリはぱちぱちと瞬いて首を傾げた。

「薬瓶? こんなものを持ってどうしましたか?」
 怪訝そうな顔を見てイザークは「なるほど」と呟いた。蓋を開けて小瓶の口をキーリに向ければ、漸く顔を強ばらせた。

「なっ。どうしてこんなものがあるのですか!?」
「これは薬師の薬棚で見つけた。気配は僅かだから俺も近くに行くまで気づかなかった。瓶に入れられていては上級の魔法使いでも気づかない。どうしてこれがあるのかすぐに調べて欲しい」


 こっそりくすねてきたそれはここに決してあってはならないものだ。問題はこれが何の薬に使われていたか。それによっては急を要する。
 キーリは眉宇を引き締め、片眼鏡越しにアーモンド形の目を光らせて小瓶を見つめる。
 イザークもまた机の上に置いた拳を強く握り、唇を噛み締めた。

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