呪われ聖女、暴君皇帝の愛猫になる 溺愛されるのがお仕事って全力で逃げたいんですが?
第2話
◇
取り残されてしまったシンシアは途方に暮れていた。何故ならロッテを追いかけようとした時には、既に彼女は姿を消してしまっていたからだ。
まさかの俊足をみせたロッテ。せめてどの方角へ走っていったのかだけでも分かれば追いかけやすいのだが。
うーんと唸っていると、隣にいたロッテの小鳥が忙しなく跳ねて鳴いた。
「チチッ、チチッ」
『ロッテの行き先が分かるの?』
「チッ!」
『お願い、案内して』
向こうの言っていることは全く分からないが、何を伝えたいのか何となく分かる。
小鳥は再度短く鳴くと、翼を羽ばたかせて空へと舞い上がった。
外の通路を進み終わると、その先の舗装された石畳の小道を通る。それから森の中を抜けていくと白い二階建ての建物――使用人専用の宿舎が見えてきた。
木々に覆い隠されるようにひっそりと佇んでいるそれは秘密の場所のようにも見える。
玄関まで歩いたは良いものの、入り口の扉はきっちりと閉まっていて入れそうにはなかった。
扉を恨めしく眺めていると小鳥が再び鳴いた。こちらだというようにぴょんぴょんと跳ねるので素直に従う。案内された場所は大木の前だった。
小鳥は畳んでいた片翼を広げて何かを示してみせた。