呪われ聖女、暴君皇帝の愛猫になる 溺愛されるのがお仕事って全力で逃げたいんですが?
(魔物の核に瘴気が含まれているってことも薬になるってことも一般の人は知らない。知っているとすれば魔物の討伐部隊の騎士とか、神官や宮殿のお偉い薬師の一部の人間だけってリアンが言っていたわ)
さらに魔物に関しては帝国と中央教会が連携して管理している。
教会がネメトンに結界を張って魔物の侵入を防ぎ、有事の際は帝国が討伐部隊を派遣する。民間のギルドが討伐することは絶対にない。
(これまで結界が破れて魔物が侵入したことがあったらしいけど、それは私が教会に引き取られる前の話で最近までなかった。魔瘴核はすぐに清浄核にされて帝国と教会が厳重に管理しているのに。……誰がどうやって手に入れたの?)
じっと考え込んでいると、小鳥が窓枠に丸薬を置いて部屋の中に引き返す。ロッテの耳元で鳴いて軽く頬をつつけば瞼が震え始め、榛色の瞳がゆっくりと開かれた。
「……私ったらどうしたのかしら」
状況が把握できていないロッテは額に手を当てながら起き上がる。
「チチッ、チチチッ」
「そう。あなたとユフェ様が助けてくれたの。――え?」
額から手を離して目を瞬きながら、ロッテは小鳥を見下ろした。困惑と歓喜を綯い交ぜにした表情が浮かび上がり、うまく言葉が出せないのか口をぱくぱくさせている。
「う、嘘……言葉が、言葉が分かるわ!!」
やっとの思いで言葉を絞り出したロッテは口元を両手で押さえ、感極まって涙を零した。
その様子を見たシンシアは目を細めた後、彼女の名前を呼ぶ。