呪われ聖女、暴君皇帝の愛猫になる 溺愛されるのがお仕事って全力で逃げたいんですが?
「侍女長から話を聞いているぞ。ユフェの世話を嫌がっていたらしいな。それから世話をしていなかったことについても報告を受けている。今回のことはそれと関係するのか?」
「……っ!!」
侍女長はロッテの配置換えの頼みも、さらには世話を放棄していたことも包み隠さず報告していたらしい。
イザークに申し出ればどうなるか分かっていたからこそ、ロッテは侍女長に相談していたのに。すべては筒抜けだった。
ロッテは血の気のない顔を上げて口を開き掛けたがそのまま噤んだ。
大事な愛猫を危険な目に遭わせた事実がある以上、どんな言葉を並べ立てたところで雷帝と恐れられるイザークがロッテを斟酌してくれる可能性は低い。
シンシアは話が恐ろしい方向へ進展してしまうのではなかと危機感を募らせていた。
(ロッテは自分が動物と意思疎通ができないから侍女長に配置換えを頼んだのよ。それを聞き入れなかったのは侍女長でしょう? 彼女が配置換えをしてくれていれば世話の放棄だってなかったんだし、ロッテが全部悪いっていうのは違うと思うわ。私が木に登ったのだってロッテのせいじゃない)
シンシアが救いを求める眼差しをイザークに向ける一方で、彼はじっと考え込むように黙り込んでいる。やがて小さく息を吐くとおもむろに席を立った。それから机を回ってロッテの前へと足を運ぶ。