呪われ聖女、暴君皇帝の愛猫になる 溺愛されるのがお仕事って全力で逃げたいんですが?
「前にも一度魔力酔いを起こしたことがあったので、あらかじめ薬を持参していました。でも、それでは足りなかったので宮殿の薬師に頼んで薬を頂きました」
「薬? 魔力酔い止めの薬か?」
イザークは聞き返すとロッテは大きく頷く。
「はい。……でも薬は効かなくて。動物たちの言葉が分からなくなっていったので原因は魔力酔いではなく、魔力を失ったのかもしれないと思うようになりました。だから侍女長にユフェ様のお世話を辞めたいと申し出たんです」
ロッテは目を伏せると握っていた自身の手首をさらに強く握りしめる。イザークは魔力酔い止めの薬と聞いて思案顔になった。
「……事情は分かった。だが今は力を使えている。ずっと服用を続けていたはずなのにどうしてだ?」
「力が戻る直前の記憶が曖昧で……。ユフェ様は知っているんじゃないでしょうか?」
不意に話を振られてシンシアは冷や汗をかく。
浄化の力を持っているのは聖女だけだ。妖精猫という存在が精霊魔法を使えるにしてもどこまでの魔法が適用されるか分からないため下手なことは口にできない。
三人の視線が一気にシンシアへ集中する。
『私はただ倒れていたロッテに声を掛けただけですよ』
きょとんとした表情でシンシアは嘯いた。
イザークは素直に「そうか」と答えると再びロッテに視線を向ける。