恋愛境界線
ガッツリ食べる気でいたのに、何だか食欲が一気に失せてしまった。
この静かで重苦しい空気をどうにかしたくて、テレビのリモコンに手を伸ばす。
42インチのテレビ画面には、私が毎週欠かさず観ているドラマの予告が映し出された。
「そういえば、先週見逃したんだった!……若宮課長はこのドラマ、先週観ました?」
「そういう低俗な番組は観ていない。そもそも他人の色恋沙汰には興味がない」
純ちゃんには悪いけど、このアボカドを今すぐ課長に投げつけてやりたい……!
ご馳走様でした、と食べることを諦めて箸を置いた私に、若宮課長が「そうそう、念のため言っておくけど」と前置きをして釘をさしてきた。
「蓮井さんの件は君の一存で引き受けたのだから、就業時間中はその件にばかり時間を割くことのない様に」
ただでさえ忙しいのだから、決して他の仕事に支障をきたさない様にと、念を押してくる課長に、「判ってます」と答えながらテーブルの下できつく拳を握る。
こうなったら、意地でも絶対にこの人に認めさせてやるんだから――蓮井さんのデザインも、私のことも!