恋愛境界線
―――――――……
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「君はまだ寝ないのか?」


お風呂から上がってきたばかりの若宮課長が、そう言ってリビングの前で足を止めた。


一瞬、ほんのりとボディソープの柔らかな匂いが鼻先を掠めていく。


「はい、もう少ししたら寝ます」


リビングでノートパソコンを広げていた私の頭上からは、突然「マッコリ……」の一言。


「マッコリ?……あぁ、はい。CMを見てたら飲みたくなって買ってきたんです」


若宮課長も飲みますか?と、マッコリのボトルを指さす。


「いや、いい。どぶろくならまだ飲めるが、マッコリは苦手だ」


「どっちも似た様なものじゃないですか……」


「味が違う」と言う課長の言葉を、「そうですか」と軽く流してマッコリを一口、口に含む。


そんな私に、「酒を飲みながら仕事をするなんて信じられないな」と、課長のため息が落とされた。


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