恋愛境界線

「それに、寝不足は肌荒れだけでなく、毛穴の開きにも繋がるしね」


美を提供する仕事に携わっている立場にありながら、肌が美しくないのでは商品に対する説得力もなくなる……とかなんとか、若宮課長はそんな言葉を並び立てた。


課長に訊きたい。寝不足だけでなく、ストレスもお肌に大敵だってことを知ってますか?と。


「若宮課長、有難うございます」


肌をガン見された挙句、わざわざ『微妙に荒れてる』と指摘されたお蔭で、私の眠気は宇宙の彼方に飛び去りました。


心の中で嫌味を唱えると、それを知らない若宮課長は「何がだ?」と眉根を寄せた。


それに対して、「いえ、何でも」と答える。


「ところで、小腹が空きませんか?」


「全く空かない。こんな時間に間食するなんて有り得ない」


第一、 自分はもう歯を磨いたから――だなんて、真面目な子供みたいなことを言ってくる。


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