恋愛境界線
「それじゃあ、私は先に寝るよ」
「はい」と答える声にユニゾンするかの様に、きゅるるる、と鳴ったお腹。
その瞬間、自分の部屋へ向かおうとしていた課長の足がぴたりと止まる。
「……今のは、何だ?」
何これ!何をどう聞いたって、私のお腹が鳴った音だって判っているはずなのに!
スルーしてくれればいいものを、わざわざ私の口から言わせようとするなんて、何の羞恥プレイですか!?
「今のはですね、私のお腹の小鳥ちゃんがさえずりをしたみたいです」
「何を酔っ払った様なことを言ってるんだ?」
どこまでもクールに、若宮課長が冷やかな目を向けてくる。
とぼけて誤魔化すつもりが、余計に恥ずかしい思いをするなんて……!課長なんて、さっさと寝ちゃえばいいのに!
お腹を少しでも満たそうと、残っていたマッコリを一気に胃の中へと流し込んだ。