恋愛境界線
「馬鹿。お腹が空いている時に、そういうお酒の飲み方はやめなさい」
そう言ってキッチンの方へ消えた課長が、ほんの5分程度の間隔を空けて再び戻ってきた時には、その手にきゅうりや大根をスティック状に切った物と、緑色のディップを持っていた。
「お腹の音で、私の睡眠を妨害しないように」
澄ました顔で、私の目の前にそれらを並べる。
緑色のディップは、私が純ちゃんに貰って、冷蔵庫の中で忘れられていたアボカドだった。
アボカドディップに大根やセロリをくぐらせ、次々と口に運ぶ。
「美味しいです!課長っ」
「こんな時間に、マヨネーズが使用されている物を、躊躇も罪悪感もなく次々と口に運べるなんて、君は何者だ?」
野菜スティックにたっぷりとアボカドディップを付ける私を、胸焼けでも起こした時の様な表情で若宮課長は見下ろしてきた。