恋愛境界線

「一体、何がそんなに不思議なんですか?」


「現在、企画部に在籍している人間は皆、他の部署で最低でも三年は様々な経験を積んできている」


それと比較すれば、ただでさえ実力のない私という人間が、企画部に配属されるまで他の部署に在籍していた期間は極めて短い。


その上、在籍していたのが、営業や研究・開発等ではなく、経理とあっては実力どころか何の実績もなく、企画部で活かせる経験も皆無に等しい。


これじゃあ、課長が疑問を抱くのも無理はないかもしれないけれど……。


そんなことを考える私の傍らでは、若宮課長が独り言の様にぶつくさと何事かを洩らしながら首を傾げている。


「よその部署で立てた実績を認められ、上司の推薦があった上で、やっとうちへの移動の希望が通るものなんだが……」


「そ、それはアレですよっ!世の中には私の様なラッキーな人間もいるってことです」


「ラッキーね……。まぁ、仕事さえきちんとしてくれれば、私としては文句はないが」


「はい、見てて下さい。課長をぎゃふんと言わせてみせますから!」


「私にぎゃふんと言わせてどうする。そもそも、今時そんなセリフを言う人間はいないよ」


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