恋愛境界線

──翌日、緊張しながら提出した案を見せるなり、若宮課長は途端に黙り込んでしまった。


「……あの、どうでしょうか?」


「この表面部分は、二層になってるみたいだけど?」


「はい。上の透明層にフロスト加工を施し、ガラスの様な質感を表現することで、高級感が出せると思います」


「色はダークブラウンか」


私と蓮井さんが選んだのは、清潔感はあるけど安っぽく見える白でも、高級感はあるけど汚れが目立ってしまう黒でもなく、茶色。


ダークブラウンの表面にはピンクゴールドで、《CREATEUR》の文字。


《クレアトゥール》の発売は秋だから、時季的にもシックな色合いが合っていると思う。


私と蓮井さんは、チョコレートをイメージしてこれを作った。


ケースの右上には、トッピングとして載っているアラザンの様に、小さめのビジューが控え目に散らばっている。


だけど、実際にビジューを使うのではなくて、加工の段階で内側に凹凸をつけて、その部分の底に七色に光る素材をプリントする、というもの。


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