恋愛境界線
「へぇ、これが《クレアトゥール》のパクトデザイン案かぁ」
支倉さんの背後を通り掛かった男性が唐突に覗き込んできたかと思うと、その人はデザイン画を支倉さんの手から奪った。
振り向いた支倉さんが、咎める様にその人を「奥田くん」と呼ぶ。
「さすが蓮井さんというべきか、さすが若宮というべきか。店頭に並んだ時にパッと目を惹くだけじゃなくて、実際に手にとってみたくなるデザインだな」
支倉さんの手から奪ったデザイン画をまじまじと眺めると、すぐに私へと返してきた。
この人は誰なんだろう?と思いながら、それを受け取る。
「あぁ、芹沢さん、この人は私と同期で、同じく広報の奥田くん」
「初めまして。企画部の芹沢さん?」
無駄に微笑みながら挨拶をしてくるその表情やセリフ。全体から醸し出される雰囲気からは、軽薄な印象を受ける。
若宮課長の様にとっつきにくい人も苦手だけれど、こういう男性もちょっと苦手なタイプだ。