恋愛境界線
* * *
「だから、渚にちゃんと連絡するんだよって言ったのに」
面倒臭いことを後回しにするのは遥の悪い癖だよ、と指摘するのは純ちゃん。
困った時の純ちゃん頼みということで、今日は就業時間と同時に仕事を切り上げ、渚に捕まる前にと、ソッコーで会社から純ちゃんの元へと逃げ込んだ。
「そうだけど、純ちゃんにだって少しは責任があると思うけど?」
「私に?どうして?」
「だって、火事のこと渚に喋ったのって、純ちゃんでしょう?」
黙っててくれればバレなかったのに……と口を尖らせていると、ピンポーンとチャイムの音が部屋に鳴り渡った。
「……随分早いけど、もう来たのかな?」
そんな独り言を零しながら、純ちゃんが立ち上がって玄関の方へと向かう。
誰か来るとは知らされてなくて、もしかしたら純ちゃんの彼氏が帰ってきたのかもしれないと、初めて顔を合わせる友人の彼氏の登場にドキドキしながら居住まいを正した。